今回は、「試合に重要な"アジリティー"を深く理解しよう」というテーマでブログを書きました。
「試合で活躍するために、アジリティー能力を高めたい!!」
「アジリティー向上のための練習ドリルを、デザインできるようになりたい!!」
という皆様には、今回の記事は楽しんで頂けると思っています!
今回の内容は、試合に必要なアジリティー能力身に付けるための、「ご自身のチームに合った、独自のトレーニングを作成する」、良いヒントとなるかもしれません。
それでは、さっそく本題に進んでいきましょう。
『素晴らしい選手に必要な素質:アジリティー能力』
皆様もご存知の通り、試合で活躍する素晴らしい選手達は、素早い方向やスピートの変化を行える能力を備えていることが多いです。
一般的に"アジリティ―"と呼ばれるこの能力は、選手やチームのレベルアップには欠かせない、非常に重要な要素だと思います。
もし自分たちが、相手よりも素早く動く方向を変えたり、素早く動き出したりすることができれば、相手からのボールの奪取や、シュート、パス、相手を避けながらスペースを得る、などのチャンスを、たくさん作り出すことができるのではないでしょうか?
では、そのような"試合に必要な”アジリティー能力は、どのように身に付ければよいのでしょうか。
アジリティー能力にはどんな要素が含まれているのでしょうか。
そこで次は、アジリティー能力に含まれる細かな要素について、一緒に整理していきましょう。
『"アジリティー”を分解する』
早速ですが、下記の図をご覧ください
この図では、アジリティー能力を大きく2つに分解しています。
1つ目が左側にある「知覚的認知能力」
2つ目が右側にある「方向転換スピード」です。
知覚的認知能力は、さらに次の要素に分解できます。
・視覚的読み取り
・予測力
・パターン認識能力
・状況理解力
・反応スピード
また、方向転換スピードの場合は、次のようになります。
・運動学的側面
-姿勢や動作に関わる技術
-足の着き方、着く位置
-ステップ幅の調整力
-姿勢や重心移動
・直線スピード
・方向転換のための下肢の筋機能
-筋力
-短縮性収縮の筋力発揮
-等尺性収縮の筋力発揮
-伸張性収縮の筋力発揮
-パワー(筋出力)
-切り返し時の筋力発揮
ここで皆さん、試合で起きる状況を想像しながら、"アジリティー"を考えてみてください。
試合中は、相手やボールの動きに反応して、素早く方向転換をおこなったり、スピードを変化させることが重要ではないでしょうか?
アジリティーとは、
「刺激に対して反応し、素早く方向・速度の転換を行う能力」
と定義されています。
この”刺激に反応して”+”素早く方向や速度を変える力”が、スポーツ選手にとって必要な能力の1つなのです。
つまり、アジリティーには筋力やパワーなどの身体能力だけではなく、反応スピードやパターンの認識能力など「知覚的な認知の力」が必要だとわかります。
『アジリティーを鍛える3種類のトレーニング』
多くのエリート選手が所属するチームでは、図の左側にある知覚的認知能力と右側の方向転換スピードの両方を含んだアジリティーテストが行われています。
しかし、トレーニングやテストの方法を調べてみると、方向転換スピードにのみ意識を置いたエクササイズも多く見かけます。
方向転換スピードだけを鍛え、測定するのでは、アジリティー能力を評価するには十分ではありません
もちろん、方向転換スピードのためのテストは、アジリティーの重要な側面を評価できるとても良い手段です。
先ほど図の右側の要素で、改善が必要なポイントを知ることに役立ちます。
そこで、一般的に知られている有名なアジリティー能力のテストを、3種類に分類してみました。
・スピード変化テスト:低スピードで走る箇所と高スピードで走る箇所をそれぞれ1つ以上設定した走行テスト
・運動性テスト:緩やかな曲線や鋭いターンなど、切り返し運動を3つ以上設定したテスト
・反応俊敏性テスト:視覚や聴覚などの刺激に対する、反応スピードを測るテスト
この3種類を上手く組み合わせることで、アジリティーの様々な要素に刺激を与え、どのポイントに改善が必要なのかを発見することができるでしょう。
そしてその発見が、どんなトレーニングを設計するかを考えるための、1つのヒントになっていくでしょう。
ただ、繰り返しになりますが、アジリティーには様々な要素があります。
テストで測定できる能力と、設計したトレーニングで磨ける能力が一致しているかどうかは、注意してみてください。
『アジリティー =「視覚的認知能力」×「方向転換スピード」』
試合で必要なアジリティー能力を向上させるためには、方向転換のスピードを鍛えることと同時に、視覚、予測力、反応スピードなどの知覚認知的能力を鍛えることが欠かせません。
実際の試合中のように、予測不可能なカオス、つまり、非特定の刺激(コーチからの合図やライトの点滅など)に反応する要素を従来のトレーニングに加える事で、アスリートの知覚的認知能力に刺激を与えし、より試合に活きるアジリティー能力を手に入れることができるのではないでしょうか?
「アジリティー能力」=「視覚的認知能力」×「方向転換スピード」
を理解し、2要素をバランスよく鍛えていくことで、より素晴らしい選手・チームを目指していきましょう。
参照:Gabbett et al.2005;ヤング、2015
『さいごに...』
いかがでしたでしょうか?
アジリティーについて、深く理解する1つのヒントになったのではないでしょうか?
私自身アジリティー能力に関して、ここまで細かく分解したことありませんでした。
私がこの記事を書きながら特に重要だと感じたことは、やはり知覚認知能力の向上に関してです。 時には、素早く動くことばかりに焦点を当ててしまい、選手が何を知覚し、認知しているのかを意識することを忘れてしまいます。
また、指導していく際には、1つの事柄を細かく分解して観察することは、とても大切なことだと思いました。
試合に必要な要素を細かく考えていくことで、選手がより納得感の持てる指導や説明が可能だと感じました。
選手の中には、体力テストや、アジリティーテストを行う目的がきちんと理解できていない選手もいるかもしれません。
指導者が自ら試合に必要な要素を細かく分解しテストを考え、「なぜそれらが必要なのか」を、選手が納得できるように提供できれば、選手達が前向きにトレーニングに打ち込めるようになるのではないでしょうか?
以上で本日の記事を終わりたいと思います。
お読み頂き有り難うございました。
『筆者 Daisuke Matsuuraについて 』
関西大学大学院卒。オーストラリア、ニュージーランドでラグビーコーチング、分析等を学び、現在はニュージーランドと日本でラグビーコーチ/アナリストとして活動中。コーチとして、ラグビーワールドカップの優勝を目指している。今後は、ヨーロッパやアルゼンチンへ活動を拡げようと計画中。言葉、映像、環境を操り、人との繋がりを大切にして、選手のパフォーマンス向上とチームの勝利を目指しています。
SNSにて、最先端のラグビーコーチ、アナリストとしての活動内容を日々投稿中!!
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